日本で一番飲まれているアルコール飲料、ビールはどう造られるか

ビールは麦から造られます。
しかし、アルコール発酵を行うには、糖分が必要です。
ワインは原料のブドウに糖が含まれていますので、そのままアルコール発酵が進みますが、
ビールの場合は、麦にある大きな糖分の塊であるデンプンを、酵素によって小さな糖分に分解してから造ります。
こうした糖化を行い、アルコール発酵させます。
これを「単行複発酵」といいます。

ビールができるまでの流れ

製麦 / 麦を発芽させて麦芽を作る

麦を水に浸します。これを「
浸麦(しんばく)」といいます。
浸麦の間も麦は呼吸していますから、空気の吹込みや水の入れ替えを2日間ほど行います。
このまま成長させ続けると、普通の麦の苗になってしまいますので、水と温度を調整し、乾燥させることで、麦の成長を止めます。
このことを「焙燥(ばいそう)」といいます。
● 焙燥
麦芽(モルト)を熱風で乾燥させますが、
85~100℃くらいの低温だと淡色麦芽に、160~220℃の高温では濃色麦芽になります。
● 焙煎(ロースト)
濃い色のビールを作るカラメル麦芽や黒麦芽にするときは、ロースターで焙煎します。
焙煎の度合いによって、様々な色合いがつけられます。
麦芽は乾燥後に根の部分を取りのぞきます。
淡色麦芽
80℃程度で乾燥させた麦芽ですが、濃色のビールでも、80%程度は混ぜて発酵させます。
100℃を超えると、酵素がうまく働かなくなることがあるので、その働きを助ける役割があります。
麦芽の種類については、「
ビールの原料について」を見てください。
仕込 / 糖やアミノ酸の豊富な麦汁を作る
麦芽を粉砕
麦芽を細かく粉砕します。
粉砕した麦芽は温水の入った仕込槽にいれ、「マイシェ」という粥状のものにします。
マイシェの中では、糖化酵素(アミラーゼ)により麦芽のタンパク質が分解され、アミノ酸になります。
デンプンの糖化
次に温度を段階的に上げていくと、デンプンが小さな糖質に分解されます。
これが「糖化」です。
酵素がはたきやすい温度(50~70℃程度)を、一定時間保ちます。
麦汁のろ過
分解が終了したあとの糖化液には麦芽の殻が残っているので、ろ過し、甘い麦汁にします。
これを「一番麦汁」といいますが、取り切れなかった殻の皮が残ります。
残った殻の皮には、10%以上の糖分が残っています。
これに湯通しして得られた麦汁を、「二番麦汁」と呼びます。
普通は一番麦汁二番麦汁を混合して麦汁を完成させます。
キリンビールから、「一番麦汁」だけを使用した「一番搾り」が販売されていますが、10%の糖分を使わない贅沢なビールといえ、上品でさっぱりした味わいが特徴です。
一番麦汁と二番麦汁を混ぜると、味の成分が多くなり、コクのある味わいになります。
米やコーンスターチなどの副原料を加えるときは、少量の麦芽と一緒にぬるま湯に入れ、煮沸してから麦汁にいれます。
煮沸釜 / ホップを加えてビールらしく
麦汁を煮沸釜に入れ、ホップを加えて、煮沸します。
ホップから成分が溶け出し、ビールらしい苦みと香りを付けることと、残っている微生物を死滅させます。
この時、ホップの品種や量、加えるタイミングの違いのよって、ホップによる香りや苦味が違ってきます。

煮沸が終わった麦汁から、ホップの粕などの固形物を取り除き、酵母が働きやすい温度まで冷却します。
発酵 / 麦汁が発酵によりビールへ
麦汁を発酵タンクに移し、ビール酵母を加えます。
発酵は、麦汁中の酵母が、糖を食べてアルコールと炭酸ガスを作り出すことをいいます。
発酵を進めるために、酸素や酵母を加えたり、冷却装置で温度管理しながら発酵させます。
一般的に、アルコール度数と糖度が高いと風味の濃い味になり、低いとすっきり系の味になります。

ビール プチトリビア2
日本酒の蔵人たちは、日本酒を造っている間は納豆厳禁という話は有名ですが、
同じ醸造酒であるビールも、製造エリアへの、納豆、ヨーグルトの持ち込みは厳禁と、キリンビールの人が本に書いています。
おそらくキリンビールだけでなく、ほかのビール会社も同じと思われます。
納豆好きや、ヨーグルト好きの社員は、さぞや肩身の狭い思いをしていることと偲ばれます。
貯酒・熟成 / よりおいしいビールへ
発酵後のビールは「若ビール」と呼ばれますが、味や香りはまだ未熟です。
ビール酵母を含んだままの若ビールを密閉タンクに移し、ゆっくり発酵させます。
発酵により発生した炭酸ガスはビールに溶け込み、発砲性を持つとともに、ビール酵母が若ビールの未熟臭を消し、おいしいビールへと熟成していきます。
熟成期間中も発酵は進み、ビールにある不快な成分を揮発させたり、のど越しのよさや泡を作りだします。
この熟成は「ラガリング」とも呼ばれ、ふつう数十日間行われます。
ろ過 or 熱処理 / ビールの品質を安定させる
熟成の後は、品質が変化するのを防ぐために、役目を終えた酵母をろ過して取り除くか、熱処理をして酵母の働きを止めます。
酵母の働きを止める方法は、「パストリゼーション」と呼ばれ、一定の温度で一定時間熱処理する方法です。
フランスのルイ パスツールがワイン業者の求めに応じて開発した方法で、ビールも同じ酵母発酵による製造方法なのでビールの品質を保つためには、有効な方法です。
最近は、技術の進歩により、熱処理しないで、ろ過して酵母を取り除く方法も行われるようになりました。
この熱処理をしないビールが、日本では「生ビール」と呼ばれ、生ものに抵抗の少ない日本では、主流となっています。

